名が好きです。大体名前が素晴らしい。漢字が真名というのに対してあくまでこっちは仮りなんで、という奥ゆかしさと文字が書かれた瞬間から書き手の意志から乖離していくかりそめのものなんだ、という自覚を感じる素晴らしいネーミングのように思います。

個展会期後一日東京滞在を延長して五島美術館で開催されていた「平安古筆の名品」展と出光美術館の「時代を映す仮名のかたち」展を回りました。
死ぬほど疲れました。二館を一日で回るものじゃない。変体仮名を生半可に覚えているため記憶の片隅から覚えたことを引っ張りだしてきて解読し、疲れるとベンチで休憩しまた陳列棚に戻る。。。なぜ私はこのような苦行をしているのかわからなくなってしまいました。文字の美しさはもとより、表具の裂、紙など見どころは多く、国宝手鑑「見努世友(みぬよのとも)」の名が示す通り時空を越え紀貫之やら藤原行成ら仮名の能書家と会ってきました。

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右端の図録は美術出版の老舗、求龍堂さまと知遇を得て頂いた帝京大学総合博物館での展示会の図録。展示会には行けませんでしたが図録としてはこれが一番すばらしかったです。当面見ぬ世の友との対話が続きそうです。


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翌日は大阪に移動し東洋陶磁美術館で「朝鮮時代の水滴」展へ。なんとか会期に間に合い、しばし文人の世界に遊びました。図録がどんどん増えていく。お金はどんどん飛んでいく。


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# by tou-kasho | 2016-12-03 01:59 | 日々の暮らし | Trackback

福緣随處

展初日の夜は勝見充男さんと軽く蕎麦を食べそのままご自宅・自在屋へお邪魔しました。前夜も痛飲して軽い二日酔いだったので酒はセーブしようと思っていたのですが、奥様が酒に合う肴を作って下さり、さらには古陶磁という最高のツマミがどんどん出て来て結局この日もだいぶ呑んでしまいました。
器のこと、プロとしてモノを書くと言うこと、愉しい話は尽きず。勝見さんがあがり症だという話には驚きました。講演など聴いていて全然そんな風には見えないのに。人前で話すのが苦手なのにそれが生業となっているのは皮肉だ、と仰っていましたが、私もあがり症でなければ今の自分は無い、と思っており現在は寧ろ感謝しているほどです。勝見さんに感じていた親近感の根幹に触れた気がした夜でした。
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もっといい写真を撮っていた筈なのですが、酔っ払いの撮影なのでこんなかんじです。手前の斑の立ちぐいがさらに酔わせてくれました。

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土モノ(砂岩モノといった方が正しいか)と石モノが同時に焼かれていた動かぬ証拠。こんなんをツマミにあっという間に終電間際。

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濱谷浩「福緣随處の人びと」より坪田譲治の頁。

談ではありますが勝見さんの奥様は新潟は高田の出身ということで、昨夏高田のギャラリーで個展をし、高田を散策したことを告げました。当時高田では小林古径記念美術館で濱谷浩の写真展をしておりその写真家を初めて知ったのですが、個展後大分県立図書館で偶然濱谷の写真集「福緣随處の人びと」を見つけました。
太平洋戦時下の文化人たちの日常のポートレイトに自筆の書が添えられた写真が多く掲載されており、彼らの当時の精神の有りようを今に伝えるとても興味深い資料でした。
福岡でお世話になっている東洋文房愛好会のメンバーにも高田にある新潟大学の書道科OBが多く、これまた福緣を感じています。

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# by tou-kasho | 2016-11-29 01:53 | 日々の暮らし | Trackback
回の展示会では本当に沢山の人や展示会、建築、アートに出会いました。
頭がいまだ消化しきれず湯気を上げています。
整理のため少し記しておきます。
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展示会前日は埼玉の狭山湖畔霊園に行き、中村拓志氏設計の管理休憩棟と森礼拝堂を見学。無宗教の礼拝堂には祈る対象となる偶像の代わりにガラス越しにとなりのトトロのモデルとなった森が広がる。自ずと自然への尊崇の念を抱くよう誘われ、我が家の隣の山神宮によく似ていると感じました。本による解説は読んでいましたが、実際に足を運びそのすばらしさを理解できました。世界各国から注目され、来客もひっきりなしのようです。

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管理休憩棟は同心円状の構成で、窓はあえて立った状態では外に広がる美しい眺望が見えないようになっており、まるで瞼が半分だけ開いている座禅でいう「半眼」の目のような状態で内部にいる者に内省を促します。そして外側に向いた椅子に座ると一気に狭山の自然が眼前に広がり故人との過去に想いを巡らせるようになる仕掛けとなっています。
設計のコンペから実際の施工の苦労話などもお聞きすることができ有意義な時間を過ごすことができました。
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夜は知人と神楽坂のふしきのさんへ。しろほしとくろほしと銘打った拙作を持参して下さり個展前夜から痛飲。ふしきのさんはお酒に合わせ酒盃も交換してくれるのですが、わがまま言ってこの盃で酌み交わしました。

〆にもう一件、西麻布のテーゼで一杯。できることはすべてやったという安堵感から本当に楽しい夜となりました。











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# by tou-kasho | 2016-11-29 00:31 | 日々の暮らし | Trackback

羽子板星

ぶや黒田陶苑での3回目の個展が終わりました。
今回もサプライズの訪問や花が届いたり、新たな出会いに恵まれたりと充実した5日間の会期となりました。
また、モノづくりの大先輩方が数人見に来られ、長年のキャリアや名声に胡坐をかくこと無く私のような若輩者の器にも目を凝らし、何かを得ようとする貪欲さと謙虚さに只々頭の下がる思いでした。

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ご声援くださった皆様、ご来場くださった皆様本当にありがとうございました。これから来年の3月ごろまで考えるだに恐ろしいスケジュールですが、これを乗り越えれば新たな地平線が見えるのではと期待をしつつ日々を大切に生きていこうと思います。

て、今回の個展では200点の器を展示しましたが、なかんずく面白い茶碗があったのでご紹介させていただきます。
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以前のブログの記事でも述べたように、直近の窯焚きはおうし座流星群が見られる夜でした。そして、その時の一盌の見込に黄色い流星のような光芒を見つけました。

「あの日の流星が茶盌の中に映りこみましたよ。」と窯焚きを手伝って下さった庭師に写真を見せると、
「黒い斑点はまさに昴だよ。」と仰っていました。

昴、すなわちプレアデス星団はおうし座の散開星団であり、確かにこの茶盌の斑点は実際の夜空のそれに配置も似ています。また別名を羽子板星ともいい、流星の光芒を羽子板で打たれた羽根の残像と見て取ることもできます。

かくしてまた忘れえぬ一晩と一盌に巡り合えたことを記念して、この茶盌に「羽子板星」と銘を付けました。
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斑茶碗 銘「羽子板星」

とある茶人のもとに旅立ち寂しい思いですが、また然るべき時に再会できれば嬉しいな、とも思っています。

我も行く心の命ずるままに
我も行くさらば昴よ

谷村新司「昴」より




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# by tou-kasho | 2016-11-27 00:11 | 展示會 | Trackback

花中君子とこじつけ小人

窯恒例行事のぎりぎりの個展作品の発送を終え、窯の胴木の間を掃除しようと中に入ると、一匹のコウモリが肩に当たり飛び去っていきました。このような経験は今までしたことがなく、個展前に吉祥文である蝙蝠に当たるとはこいつは幸先がええな、とひとり喜んでいます。

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花中君子盃

蓮は泥に出でて泥に染まらず、ということで蓮の別名を花中君子と呼び、蟹もまた横歩きの様が権力に与せず我が道を行く姿に例えられ横行君子と呼ばれるそうです。君子たる蓮の中にはさらに横行君子、というどんな濁酒も澄んでしまいそうな盃を自戒の念を込めて作ってみました。釉調もとろみがあり、今後の実験も楽しみです。

あ、いよいよ明後日18日より個展です。
肩で風切る伊達男も、お洒落でシックなレナウン娘もワンサカワンサとお運び下さることを鶴首してお待ちいたしております。


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# by tou-kasho | 2016-11-16 15:24 | 仕事 | Trackback